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杜に想ふ 日本らしさ 山谷えり子

令和7年11月03日付 5面

 私の故郷福井では越前がにの水揚げが始まらうとしてゐる。
 晩秋、深秋、暮秋と秋の深まりを表現する言葉を思ひながら、世界も日本も大転換期にあることを痛いほど感じてゐる。しかし今、厳しい国会での政権運営と政策協議のなかで、多くの国民の皆さまが日本の発展の中心軸について思ひをめぐらしてくださるさまは、むしろ変革の時代の力の基盤となっていくのではないかとも感じてゐる。
 昨今のメディアは、保守対リベラルとの表現を安易に使用するが、もともと日本の国がらは対立する概念でものごとを判断しようとはしてこなかった。自民党が野党になった時、苦しみのなかでまとめた平成二十二年の新綱領は、「反共産・社会主義、反独裁・統制的統治」と「日本らしい日本の確立」の二つを目的として立党されたと冒頭に記し、国がらについて「日本国及び国民統合の象徴である天皇陛下のもと、今日の平和な日本を築きあげてきた。我々は元来、勤勉を美徳とし、他人に頼らず自立を誇りとする国民である。努力する機会や能力に恵まれぬ人たちを温かく包み込む家族や地域社会の絆を持った国民である」とし、「我々が護り続けてきた自由(リベラリズム)とは、市場原理主義でもなく、無原則な政府介入是認主義でもない。……他への尊重と寛容、共助の精神からなる自由であることを再確認したい」と続けてゐる。つまり、建国の詔にあるやうなあたたかい和合を実現するための政治を国民とともに作る決意をうたったのである。
 この十一月十五日で自民党は結党七十年を迎へる。伝統を大切にしながら、秩序のなかに前進を求める進歩的政党として歩みぬく責務を一層感じてゐる。であればこそ、基本理念をふまへた政策協議の土台には憲法改正、皇位の安定継承のための法整備、安全保障とエネルギー政策の一致がなければならない。
 行き過ぎた個人優先主義政策は自助、共助、公助のバランスを崩し、徳の力を弱め、絆を壊して、社会全体に攻撃的な空気を広げていく。今や誰もが発信者になれるデジタル社会だが、そこに意図的な偽情報や中傷が混じれば、さらに難しい局面を作って民主主義の土台をゆるがすだらう。
 日本人の底力を信じるからこそ、自立心を損なふ社会主義的政策を排し、バランスのとれた歴史教育や祭りなどを通じて共同体への愛を育む支援を経済成長政策や外交防衛政策とともに両輪としていきたい。
 このところ、なぜか鎌倉時代の御成敗式目「神は人の敬によりて威を増し人は神の徳によりて運を添ふ」といふ一節や西郷隆盛の「政の大体は、文を興し、武を振ひ、農を励ますの三つにあり」をしきりと思ひ出してゐる。“不安を希望に”の高市総理のメッセージを胸に、皆で日本再興を成しとげたい。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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