論説
神宮大麻暦頒布終了祭 問題意識・危機意識の共有を
令和8年03月16日付
2面
今号掲載の通り、令和七年度の神宮大麻暦頒布終了祭が三月五日、伊勢の神宮で斎行された。
昨年は第六十三回神宮式年遷宮における諸祭・諸行事の嚆矢として山口祭・木本祭が斎行され、今年は天皇陛下より日時御治定を賜った木造始祭をはじめ、全国の神社関係者も参加するお木曳行事(第一次)などが予定されてゐる。本宗と仰ぐ神宮の奉賛については、かねて式年遷宮の奉賛、参宮の促進、そして神宮大麻の頒布が三本柱とされてきた。先例に倣へば、式年遷宮の中心的祭儀である皇大神宮・豊受大神宮における遷御の儀は令和十五年に執りおこなはれる予定だ。いよいよ本格的に式年遷宮が始動するなか、神宮大麻の頒布をめぐる昨今の状況などについて改めて確認しておきたい。
○ 神宮大麻暦頒布終了祭の斎行後には、引き続き神宮大麻暦頒布春季推進会議が開催され、今年度の神宮大麻頒布数が、前年度を十万六千百一体下回る七百八十三万六千七百四十七体となったことなどが報告された。
振り返れば神宮大麻の頒布数は、終戦直後の混乱ののち戦後復興や高度経済成長のなかで増体が続き、平成六年度には戦後最多の九百五十三万二千六百四十九体を頒布。目標としてきた「一千万家庭神宮大麻奉斎」も近く達成されるものと思はれた。しかしながら、その後は漸減傾向が続き、昨年度はつひに八百万体を割り込んだ。もちろん、そもそも人口が減少してをり、世帯数の増加も核家族化や単身世帯の増加が背景にあること、さらには神棚奉斎率の低下など原因はさまざま考へられよう。
この間、斯界では都市並びに団地対策をはじめ、昭和六十二年度からの指定県制度、平成十七年度からのモデル支部制度を通じて増頒布に取り組み、さらに同二十六年度から令和四年度までは、頒布率の低い都市部での頒布を見据ゑた「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」に基づき施策を推進。その後も「氏子区域の実態把握」と「頒布奉仕者の意識向上」を重要課題として踏襲しながら、単年度の施策を策定して各種活動を展開してきた。
今年も頒布終了祭にあはせて神宮大麻都市頒布向上研修会が開催されてゐるが、さうした研修会参加者に限らず、まづは広く神宮大麻の頒布に係るこれまでの経緯や現状の把握に努めたい。
○ 経緯や現状の把握といふことに関していへば、例へば神社本庁では令和四年の神宮大麻全国頒布百五十周年を記念して『神職用教本 全国の神社がなぜ神宮大麻を頒布するのか』を発行してゐる。同書では、神宮を本宗と仰ぐ所以や全国頒布の歴史と意義を解説するとともに、神宮の神徳宣揚と神社神道の興隆との相関関係などについて考察。明治以来の神宮大麻の頒布数や参拝者数、頒布組織の変遷図、各種統計調査の結果などといった多くの参考資料も収録されてゐる。
また例年「月刊若木」一月号附録「神社庁・全国神社総代会・指定団体の活動概況」には「神社庁の神宮奉賛活動」統計として、各都道府県の神宮大麻頒布数、千分率での頒布率、頒布始奉告祭・頒布終了奉告祭と参宮団の実施件数を掲載。過去の「月刊若木」を参照することで、今までの変遷も具に知ることが可能だ。
かうした神職用教本や「月刊若木」に加へ、本宗奉賛ブックレット「神宮大麻の歴史と意義」「神宮大麻・暦についてのQ&A」やモデル支部制度の報告書などは、神社本庁の神職専用サイトでいつでも閲覧できる。今後の施策や具体的な取組みを検討する上でも、このやうな資料は有益だらう。
○ もちろん奉仕神社の日々の護持運営さへ困難な場合など、神宮大麻の頒布や式年遷宮の募財に努める余力がない向きもあらう。また物価高騰など厳しい社会状況が続くなか、頒布奉仕者の労苦は想像に余りあり、その年々の尽力に改めて敬意を表したい。
神宮大麻の頒布をめぐる成果は神社本庁の財政などとも関はるが、加へて組織としての活動状況を窺ひ知る上での一つの指標としても重要な意味を持つのではなからうか。さうした現状が今後の式年遷宮の募財をはじめとする神宮の奉賛活動に、また斯界の将来にいかなる影響を及ぼすのか。問題意識・危機意識を共有した上で、これからの神宮大麻頒布のあり方について斯界を挙げて考へていきたいものである。
令和八年三月十六日
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