文字サイズ 大小

論説 新年度にあたり 先人の歩みを学ぶ機会を

令和8年04月06日付 2面

 桜前線が北上するなか、今年も新年度を迎へた。
 都内では平年より五日早い三月十九日に靖國神社の標本木の観測に基づき桜の開花が発表されてをり、そのほか各地でも今年は暖かな日が続いた影響で、開花時期が早まる傾向にあるやうだ。斯界においては神社本庁が七月一日からの一年間を会計年度とするため六月末日までは令和七年度となるが、全国各地の神職養成機関では卒業式や入学式がおこなはれ、また各神社では新入職員を迎へ入れる季節となる。
 桜花咲き誇るなか、新たな生活を始めた新入生や新社会人の前途が明るく希望に満ちたものであることを切に願ふものである。


 新年度にあたり斯界における向後の動きを少し概観すれば、桜は満開を過ぎて葉桜となる頃にもならうが、伊勢の神宮では第六十三回神宮式年遷宮にあたり御用材を内外両宮に曳き入れる御木曳初式が四月十二・十三の両日に亙り執りおこなはれる。また四月二十一日には両宮において、造営工事を始めるに際しての木造始祭を斎行。さらに五月から七月にかけては、御用材を両宮域内へと曳き入れる第一次お木曳行事が予定されてをり、全国の神社関係者なども特別神領民として参加する。
 一方、式年遷宮の募財機関となる奉賛組織の設立に関しても、本格的に動き始めるやうだ。この四月には神社本庁と一般社団法人日本経済団体連合会・日本商工会議所・公益社団法人経済同友会の経済三団体が設立者となり、まづは一般財団法人としての奉賛会設立を予定。引き続き公益財団法人に移行すべく内閣府に申請をおこなひ、財務省より指定寄附金の認可も得た上で、令和十年を目処に全国で募財活動を始める見通しだといふ。
 半官半民といはれた終戦直後の式年遷宮ののち、これまで奉賛会を組織しての募財活動が続けられてきたが、平成二十年の公益法人制度改革後における初の奉賛会設立となる今回は従前と異なる部分もあり、慎重に準備が進められてゐる。いよいよ式年遷宮に向けた気運醸成が期待されるなか、募財活動の開始を見据ゑつつ、広報活動や啓発活動の準備も遺漏なく整へたい。


 さうした式年遷宮の諸祭・諸行事や奉賛組織の設立準備のなかで、新緑が深まりを見せる頃になれば、斯界恒例の青葉会議が開催される。期間中の五月二十日には、明治神宮会館で神社本庁が設立八十周年記念大会を挙行。また翌二十一日からの五月定例評議員会では、次年度予算案などの審議がおこなはれるが、そのほか庁舎大規模改修工事の実施案なども議案として上程されるといふ。
 神社本庁では昭和二十一年二月三日の設立以来、同七年に建設された全国神職会館を庁舎として利用。若木庁舎として長く親しまれたが、設立四十周年を期して新庁舎建設が企図され、同六十二年に現庁舎が竣功してゐる。その庁舎も竣功から四十年近くを経て老朽化が目立つため、このほど外壁や屋根を含めた初の大規模改修工事が実施される。
 そのやうな庁舎をめぐる変遷等に鑑みても、神社本庁が八十年といふ決して短くない歳月を積み重ねてきたことが理解できよう。設立八十周年の節目に際して、さうした歴史についても改めて確認したいものである。


 現在の神社本庁において、旧庁舎を知る職員は数人が残るのみとなった。加へていへば斯界全体において、例へば戦前の国家管理時代の神宮・神社を知る世代、また神道指令発出にともなふ本庁設立や終戦直後の式年遷宮を知る世代の多くはすでに一線を退き、さらにはさうした世代から身近に話を聞いた世代さへずいぶんと少なくなった。国家管理時代や本庁設立前後の歴史を体験した世代においては自明だったやうなことが、今の神職の多くにとっては改めて学ぶ機会を設けなければ知り得ない遠い過去の出来事となってゐるといへよう。
 この新年度にあたり、神職を目指して養成機関に入学した新入生、また神職としての第一歩を踏み出した奉職者たちが、先人たちの歩みを顧み、その思ひを胸に抱きつつ、これからの斯界の歴史を作っていってくれることを期待したい。斯界において、そのための学びの機会をしっかりと設けることがなにより肝要だらう。
令和八年四月六日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧