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杜に想ふ 龍の呼び声 涼恵

令和8年07月13日付 5面

 「神職として研修や講習会で出会った同期の仲間は、一生の絆。学ぶことと同じくらゐ友達作りも大切に」。開講の挨拶で先輩神職から贈られた言葉。今改めて、その重みを感じてゐる。
 親睦を深めるなかで、お互ひの神社を取り巻く環境や立場を理解し合ひ、率直に意見を交はす。同じ神職でも地域や歴史、年代が違ふことで広がる世界がある。辛いと感じる時には「仲間も頑張ってゐる」、さう思ふことで、踏ん張る力が湧いてくる。
 二十七年前、國學院大學で開催された権正階の講習会に参加した。受講者は九人。どういふ訳か最年少の私が班長となり、必死に班をまとめようとしてゐた。祭式の実技では、高齢の受講生が苦戦される場面も。弱気になる仲間に「大丈夫。全員で合格しよう!」と声をかけ居残り練習を重ねて、最後まで励まし合った。そして迎へた修了奉告祭。全員が無事に合格した時の嬉し涙は、今でも忘れられない。
 数年前、苦楽をともにした同期の一人からSNSを通じて連絡をいただいた。現在は愛媛県の惣河内神社で宮司として奉仕されてゐて、神社本庁が展開する「過疎地域等神社活性化推進施策」の推進神社に指定されたことを機に、神社でコンサートを開催したいと声を掛けてくださったのである。
 惣河内神社は「龍の谷」と呼ばれる地域に鎮座し、龍神様をお祀りしてゐるといふ。不思議なことに私が奉職する神社でも白龍様をお祀りしてゐる。現地を訪れると、そこには人々の丁寧な暮らしが息づいてゐた。美しく手入れされた棚田、清らかな川、闇に舞ふ蛍、甘くて美味しいみかん。守り続けたい日本の原風景があった。
 同期の宮司は「限界集落」を「限界に挑戦する集落」と捉へ、地域の魅力を発信し続けてゐる。その前向きな姿勢には、頭が下がるばかりだ。神社を護持し、次代へ受け渡すことの難しさは、私自身も奉務社の再建の歩みのなかで幾度となく感じてきた。都会であれ山里であれ、神社に奉仕する者には、共通する覚悟と願ひがある。
 その想ひを募らせ臨んだコンサートは、お蔭様で多くの方々に支へられ、大盛況で終へることができた。宮司さんから五年は続けたいとの言葉をいただき、より使命感が増した。
 まさか権正階講習からこのやうな物語が始まるとは……御縁とは本当に不思議なもの。
 少子高齢化や過疎化が進む現代において、神社の護持運営は決して容易ではない。しかし、できることはある。神様との縦の繋がりと、人との横の繋がり。天地を繋ぐ一つの出逢ひが、時を重ね、新たな実りをもたらしてくれた。未来に希望を描き続ける。そのことを教へてくれた同期との再会に感謝しながら、これからも一つ一つの御縁を大切に歩んでゆきたい。
(歌手、兵庫・小野八幡神社権禰宜)

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