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論説 地域社会の安寧を祈り 社会を明るくする運動

令和8年07月06日付 2面

 今年も法務省が主唱する「社会を明るくする運動~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~」の強調月間である七月を迎へた。
 この運動は、「すべての国民が、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合はせ、新たな被害者も加害者も生まない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な活動」。昭和二十四年の「犯罪者予防更生法」の施行にあたり東京・銀座の商店街有志が開催した「犯罪者予防更生法実施記念フェアー」や、翌二十五年の「矯正保護キャンペーン」の全国的な実施などを契機に同二十六年から始められたもので、今年で七十六回目を迎へる。
 神社は地域社会を基盤とし、その精神的な核とされてきた。さうした意味では、この「安全で安心な明るい地域社会を築く」ための活動は、決して神社にとっても無縁ではないだらう。


 終戦直後からの長い歴史を積み重ねてきた「社会を明るくする運動」だが、「更生保護制度に関する世論調査」(令和七年)によれば、その認知度は二六・〇%(「趣旨まで知っていた」=五・五%、「言葉は知っていたが、趣旨は知らなかった」=二〇・五%)にとどまる。
 かうした状況に鑑み、「更生保護の役割や活動を、より効果的に伝えていくために、“社会を明るくする運動”の関係者が、より具体的な共通の方向性をもって、一体的に運動を行うことが必要」との考へから、今年は「『保護司』をはじめとする更生保護ボランティアを広く知ってもらおう」との統一テーマを新たに設定。わが国の更生保護が、保護司をはじめとする更生保護ボランティアによって支へられてゐることを大きな特徴とすることなどを踏まへたものだといふ。
 ただ、その保護司の数は長く減少傾向にあり、今年一月一日現在の総数は約四万五千人。宗教家は一二%の五千四百人ほどで、このなかには神職として約四百四十人も含まれてゐる。まづは斯界においても、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支へるボランティアである保護司の活動について、より理解を深めたいものである。


 更生保護をめぐっては昨年六月一日、従来の懲役と禁錮を廃止して新たな刑として拘禁刑を創設する「刑法等の一部を改正する法律」が施行されてゐる。この拘禁刑創設により、受刑者の必要性に応じた作業の実施、作業と指導を柔軟かつ適切に組み合はせた処遇、作業を含む受刑生活への動機付けの強化など、個々の受刑者の特性に応じて改善更生・再犯防止のために必要な作業をおこなはせたり、必要な指導をおこなったりすることが可能になったといふ。
 先日、拘禁刑導入から一年を経たことについて会見で記者から問はれた平口洋法相は、この一年間で着実に取組みが進められてきたとの認識を示した上で、「再犯防止をさらに進めていくためには、拘禁刑の趣旨を踏まへた処遇の充実強化や刑務官や専門スタッフなどの職員体制の整備、処遇の担ひ手である職員のスキルアップなどに取り組んでいくことが課題」と述べてゐる。
 拘禁刑の対象となるのは、改正法が施行された昨年六月一日以降に発生した事件・事故で有罪になった者のため、運用実績の検証などにはまだ少し時間がかかりさうだ。今後の動向についても注意深く見守っていきたい。


 わが国における刑法犯認知件数は、平成十五年から令和三年まで一貫して減少してきたが、その後は四年連続で増加。とくに近年は、匿名・流動型犯罪グループによる兇悪な強盗事件、オレオレ詐欺をはじめSNS型の投資・ロマンス詐欺など特殊詐欺の多様化と巧妙化、さらには神社も被害に遭ってゐる組織的な金属盗難などが、治安上の大きな課題となってゐる。
 そのやうななか、受刑者の改善更生・再犯防止に向けた「社会を明るくする運動」は、新たな犯罪被害者を生まないための取組みでもあり、その重要性が一層増してゐるといへよう。またさうした活動は、地域社会の安寧を祈る神社における祭祀にも通じるものがあるのではなからうか。保護司として平素から更生保護に携はる神職に限らず、より広く「社会を明るくする運動」に関心を持ちたいものである。
令和八年七月六日

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