杜に想ふ
道の心 山谷えり子
令和8年07月06日付
5面
これからの夏の朝は、朝顔の咲き具合が気になる。昨夏は暑さ厳しく、色鮮やかな大輪には思ふやうに出会へず淋しかった。今年はどうだらう。
ふるさと福井の幕末の歌人・橘曙覧は日々の暮らしのなかの喜びを詠み続け、“たのしみは”で始まる「独楽吟」五十二首を連作された。たとへば「たのしみはまれに魚烹て児等皆がうましうましといひて食ふ時」などがあるが、歌人を世界的にも有名にしたのが、平成六年に天皇・皇后両陛下が公式訪問で訪米された歓迎晩餐会の席でクリントン大統領が「たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時」を好ましく紹介したことであった。「独楽吟」のなかには、「たのしみは神の御国の民として神の教をふかくおもふとき」といふ歌もあり、年を重ねるごとに国と日々への愛と感謝の心は一つのものであることを感じ直してありがたい気持ちになる。
福井は第二十六代・繼體天皇のふるさとでもある。武烈天皇崩御後、越前から迎へられ皇統を繋がれた天皇で、應神天皇の五世孫にあたられる。中央集権的な国家体制を進められた天皇であるが、先人たちは男系で繋ぐことでこそ皇位と国の安定の基盤が固まることを確信されたわけで、皇室典範改正を考へる今だからこそ、なほさら、その思慮の深さを尊く思ふ。
さらに、日本が成立していく過程を考へる点で、六月六日にユネスコの諮問機関イコモスが「飛鳥・藤原の宮都」を世界文化遺産に登録するやう勧告したことも、大和の国の国づくりを考へるうへで大きいことであった。六世紀末から八世紀初頭にかけて、今の奈良県橿原市、桜井市、明日香村に広がる遺跡群で、地元や有志の方々の十九年間に亙る取組みの結実である。私も、長く「飛鳥古京を守る議員連盟」の一員として何度も現地を訪れた。和の思想による国づくり、東アジアとの交流のなかで天皇中心の国家と律令制度を作り上げた、今の日本に繋がる原点ともいへる歴史回廊めぐりは、訪れるたびに感慨を覚えたものである。今月いよいよ登録が正式決定されるといふことで、待ち遠しいことである。
もうひとつ、歴史、伝統、国がらについて考へていくうへで、文化面では書道のユネスコ無形文化遺産登録も今年の十二月に決定されるのではないかといはれてゐる。無形文化遺産についてはその後、令和十年に「神楽」、令和十二年に「温泉文化(湯道)」、令和十四年に「武道」をユネスコへの提案とするべく関係者で準備中である。
道の心はすなはち神ながらの道であり、今も人々の心の根柢にある感性と日々の暮らしぶりである。古から育まれてきた日本人の心への目醒めがかうしたユネスコ登録により、国内外に広がっていけば、嬉しいことである。努力し続けたい。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)
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