論説
北方領土の日 返還運動・啓発活動の継承を
令和8年02月16日付
2面
今年も二月七日の「北方領土の日」を迎へた。
「北方領土の日」は、「北方領土問題に対する国民の関心と理解を更に深め、全国的な北方領土返還運動の一層の推進を図る」ことが趣旨。「北方領土の一括返還を実現して日ソ平和条約を締結し、両国の友好関係を真に安定した基礎の上に発展させるという政府の基本方針を支える最大の力は、一致した粘り強い国民世論の盛り上がりである」「北方領土問題に対する国民の関心と理解は、着実に深まりつつあるが、全国的観点にたてば、なお一層の啓発を図る必要がある」との認識に基づき、昭和五十六年に制定された。
政府の外交交渉を強力に後押しするためにも、引き続き全国的な啓発活動の推進に努めたい。
○ 今号掲載の通り都内においてはこの日、北方領土返還要求全国大会が開催され、高市早苗首相をはじめとする政府関係者や元島民などを含め、官民の関係者が一堂に参会。北方領土の早期返還を求める固い決意を改めて内外に表明した。ただ大会のなかでも言及があったやうに、令和四年のロシアによるウクライナ侵攻にともなひ日露関係は悪化し、近年は北方領土問題の解決に向けた交渉再開の目処すら立たない難しい状況が続いてゐる。
そのウクライナは、八世紀のキエフ・ルーシ(キエフ公国)の成立以降、モンゴルやポーランドによる支配、ロシア帝国への併合、ソビエト連邦の構成共和国としての再出発などを経て、ソ連崩壊にともなひ平成三年に独立。一方、北方領土は一度も外国の領土となったことがなく、歴史的にも法的事実から見ても、わが国固有の領土である。さうした歴史的な経緯の相異などもあり、ウクライナと北方領土について同列には論じられない部分もあらう。しかし、いづれも軍事力の行使による他国領土の制圧に起因する問題であり、いはゆる力による現状変更といふ点で、さらに現在の交渉相手がロシアのプーチン大統領であるといふ点では共通する。
ウクライナ情勢の今後を冷静に注視しつつ、毅然とした態度で、かつ粘り強く、北方領土の早期返還を訴へ続けていくことが重要だらう。
○ この「北方領土の日」を中心に、全国各地でも講演会や研修会、パネル展、署名活動などさまざまな取組みがおこなはれてゐる。昨年は大東亜戦争終結八十年の節目にあたったが、戦後八十年を経て元島民の高齢化が進むなか、一刻も早い解決が望まれる。またさうした歳月の経過にともなひ記憶が風化していくなかで、その伝承者・後継者の育成が課題になってゐるといふ。
昨年、担当大臣が北海道根室市・納沙布岬から対岸の北方領土を視察した際には、北方領土を外国と認識してゐると受け止められかねない発言をしたとして問題視されるやうなこともあった。この納沙布岬からわづか三・七キロの位置には歯舞群島の一つ貝殻島があり、その距離は極めて近い。一方で国民一般の問題意識には温度差があり、八十年といふ歳月の経過のなかで、その関心や理解にも少なからず隔たりが生じてゐるといへるだらう。
ロシアに限らず中国・アメリカなどの大国が自国の利益のためには手段を選ばないやうな昨今の厳しい国際環境のなかで、北方領土問題の解決は決して容易ではない。記憶の継承や問題意識の共有による返還運動・啓発活動の粘り強い継続こそが重要であることを改めて肝に銘じたい。
○ 斯界においては、神社本庁・神道政治連盟・神道青年全国協議会・全国氏子青年協議会などが北方領土返還要求全国大会を主催する実行委員会の構成団体に名を連ねてゐる。
とくに斯界の尖兵たる神道青年全国協議会(神青協)では昭和四十六年から本格的に北方領土問題に取り組み、同五十三年には創立三十周年記念事業の一環として「北方領土返還全国キャラバン」を実施。納沙布金刀比羅神社境内に北方領土の碑を建て、周年ごとに早期復帰祈願祭を斎行してゐるほか、各単位会でも各種の啓発活動に努めてきた。
北方領土早期返還に向けた取組みが、神青協により世代を超えて受け継がれてゐることは洵に心強い。引き続き、神青協をはじめ斯界を挙げた取組みに期待するものである。
令和八年二月十六日
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