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論説 問題意識と危機感を共有し 神青協中央研修会

令和8年04月13日付 2面

 今号掲載の通り、去る三月二十四日から二十五日まで一泊二日の日程で、神道青年全国協議会の中央研修会が奈良市で開催された。
 今年の中央研修会の主題は「稽古照今~奈良に倣ひ、未来を切り拓く~」である。この主題に相応しく、薬師寺長老の山田法胤氏をはじめ、能楽囃子方大倉流小鼓方十六世宗家の大倉源次郎氏、神具・三宝(三方)の製造に不可欠な挽曲げの伝統技法を継承する吉谷侑輝氏、さらには写真を通じて古都の魅力を発信してゐる俳優の加藤雅也氏、書家としての活動に加へて絵馬のデザインや妖怪画なども手掛ける逢香氏といった、日本の伝統を踏まへつつさまざまな活動に取り組む四氏が講師として登壇した。
 全国から約三百人の青年神職が集ひ、古都・奈良での学びを通じて見聞を広めるとともに、同志との親睦を深める有意義な機会となったやうだ。


 この中央研修会については、これまで本紙論説でたびたび採り上げてゐるが、その内容は時々の青年神職の問題意識を映し出す鏡ともいへる。近年の中央研修会を顧みるに、疫禍もあって本来の形式で開催できなかった年もあったが、主題や開催趣旨を見る限り青年神職としての問題意識はおほむね一貫してゐるといへよう。
 まづ広く共有される前提として、わが国では過疎化や少子高齢化といふ構造的な変化に加へ、精神的な面では価値観の多様化が進み、人々の関係性の稀薄化など地域社会が大きく変容してしまったといふ認識がある。さうした状況のなか、神社の護持運営は伝統的な地域社会に根差してゐる部分が多いため、従来通りのあり方では近い将来行き詰まってしまふ。そこでまづは、時代がいかに変化しても改めるべきではない神社の本質的な部分と、時代に応じて柔軟に対応してよい部分とを見極めながら、新しい時代の神社護持のあり方を摸索していかうといふ姿勢が窺はれる。
 その若さゆゑに時代の変化に敏感で、現状のみならず将来についてもわが事として真剣に考へることが求められる青年神職ならではの問題意識の表れであるといへよう。


 神社における不易流行、伝統と革新の見極めが重要であることは論を俟たない。しかし、もちろん見極めのみを続けてゐても現状を打開することはできず、事態を改善させられるのは行動のみであらう。どこかで決断して行動に移さなければ課題は解決しないが、かうした行動には逆風がつきもので、どんなに当事者が本質を厳守してゐると確乎たる自信を持ってゐたとしても、新たな取組みは往々にして「型破り」などと周囲から批判される。
 やや極端な例だが、吉田神道を提唱・大成した吉田兼倶や、国学四大人の一人に位置付けられる平田篤胤などの先賢であっても、同時代の神道人などからは相当な批判を受けたのである。
 もとよりあへて型破りを推奨するわけではないが、十分な見極めののち批判を恐れず行動する若き気概も、青年神職における不易の精神といへるであらう。さうしたことを含め、青年神職としてのあり方を端的に示したのが、よくいはれる「斯界の尖兵」といふ言葉だったのではなからうか。


 近年は、先に挙げた過疎化、少子高齢化、価値観の多様化などといった事柄が、斯界に限らずさまざまな課題における原因として挙げられる。さうした事柄が枕詞のやうな単なる修辞として意識されたり、日常の一齣として目に映るやうになったりしては、もはや危機感さへ覚えなくなり、思考の停止を招きかねない。
 神社をめぐる社会環境が日々刻々と移り変はっていくなかで、これから十年先、二十年先も実際に神社の護持運営を担ふことになる青年神職だからこそ、現在の、そして将来における危機感を共有できるといふ側面もあるだらう。青年神職には未熟な面も残るが、現状を打開するために行動する活力に満ちた世代である。その活動を斯界全体でしっかりと見守りながら、協力・支援していくことも重要なのではなからうか。
 中央研修会における学びの成果に基づき、問題意識と危機感を共有する青年神職たちが積極果敢に行動し、斯界の未来を切り拓いていくことを期待するものである。
令和八年四月十三日

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