文字サイズ 大小

論説 夏休みにあたり 氏神さまで夏の思ひ出を

令和8年07月27日付 2面

 暦の上では、一年のなかで最も暑い時期とされる二十四節気のひとつ大暑を過ぎた。欧洲では記録的な猛暑によって死者が一万人を超たとの報道もあり、昨今の世界的な異常気象の影響が懸念される。一方、わが国においては奄美・沖縄から順次梅雨明けしてをり、これから暑さの本番を迎へることとなりさうだ。
 さうしたなか、子供たちの多くが楽しみにしてゐるであらう夏休みが始まった。斯界にとっては林間学校や緑陰教室、ボーイスカウト・ガールスカウトの活動など、子供たちを対象とする教化事業が盛んにおこなはれる時期でもある。暑さ対策への配慮は必要となるが、今年も全国各地でさまざまな行事が開催され、境内に子供たちの元気な声が響き渡ることを期待したい。


 その夏休みを前に、文部科学省は事務連絡「長期休業期間中等の学び・体験の充実について」(要請)を全国各都道府県の教育委員会などに発出。近年、家庭環境の多様化等を背景として、長期休業期間における多様な学び・体験活動の機会の充実が重要な課題となってゐることを踏まへ、学校施設や社会教育施設の積極的な活用を図るとともに、地域学校協働活動をはじめとする地域の多様な主体との連携・協働の下、子供が学びや体験活動に参加できる機会の充実を一層推進することを求めてゐる。
 かうした要請の前提として、気候変動の影響等により記録的な猛暑となり、とくに経済的に困難な状況にある家庭において住環境・冷房設備の制約などから熱中症等の健康被害の危険性が高まってゐることや、物価高騰等を背景とした生活困窮の深刻化により、夏季休業期間中における子供の健康や生活環境の悪化、食事機会の確保についての懸念が一層高まってゐることなどもあるといふ。さうしたことも踏まへ、当該要請においては地域におけるさまざまな関係者の連携・協力により、地域全体で子供の成長を支へる体制づくりを推進することが示されてゐる。
 もちろん、すでに地域との密接な連携・協力の下で夏休みの各種行事を実施してゐる神社も少なくない。今後、さうした青少年の健全育成に向けた教化活動の裾野拡大、さらなる充実が図られることを切に望むものである。


 今から四十年ほど前の昭和六十二年、奇しくも今号と同じ七月二十七日付の本紙には「夏休み 少年教化の好季節迎へ 神社の森に子供を集めて」と題し、林間学校や緑陰教室などを開催してゐる神社の神職による座談会記事が見開きで掲載されてゐる。
 座談会出席者の奉仕神社の規模、行事開催の経緯や経過、参加者の数などはさまざまで、このうち終戦直後に家庭で子供たちの面倒を見られないやうな状況があるなかで、地元の世話人たちが「せめて夏休みの間だけでも神社で子供を預からう」と始められたといふ林間学校は、この座談会後も続けられてをり今年で第七十五回を数へる。また第二次ベビーブーム世代の子供たちが中学生となってゐた当時、すでに都市部では児童数が減り、行事参加者も減少傾向にあるとの指摘が見られるなど、時代状況も垣間見えて興味深い。
 加へて、「子供を通した親への教化」「神社でなければ出来ないことをすべき」といふ視点、「境内の緑で環境は充分」で、あとは「神職さんの情熱が大事」との発言、協力者確保の重要性への言及など、その内容は現在も大いに参考になりさうだ。


 厚生労働省が七月十五日に公表した令和七年の「国民生活基礎調査」の結果によれば、十八歳未満の子供のゐる世帯における母親の仕事状況は、「仕事あり」が八一・二%(うち正規三四・七、非正規三五・八)と過去最多。平成十六年の五六・七%(うち正規一六・九、非正規二六・二)から大幅に増加してゐることがわかる。終戦直後の混乱、ベビーブーム後の子供の減少、そして現在の母親の就業率の増加など、夏休みの子供たちをめぐる環境は大きく変化し、猛暑や貧困などを含め新たな課題も生じてゐるといへよう。
 さまざまな課題が指摘されるなかではあるが、子供たちには氏神さまで夏休みの楽しい思ひ出を作ってほしい。それが斯界の掲げる青少年の健全育成、ひいては次代を担ふ神社の協力者を増やしていくことにも繋がっていくと信じるものである。
令和八年七月二十七日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧