論説
教誨師養成研修会 地域の安寧に貢献する意義
令和8年05月04日付
2面
今号掲載の通り、「神社本庁教誨師養成研修会」が四月十三日から翌十四日にかけて開催され、教誨師を目指す神職や新任の本庁教誨師など約二十人が参加した。
教誨師は、刑務所や少年刑務所などの矯正施設において、被収容者の希望に応じて宗教行事・集合教誨・個人教誨などの宗教教誨をおこなひ、信教の自由を保障しつつ精神的安定を与へることで、被収容者の改善更生と社会復帰に寄与。その総数は千七百八十六人で、このうち仏教系が千百六十七人(六五・三%)、キリスト教系が二百四十三人(一三・六%)、諸宗(天理教等)が百五十九人(八・九%)、本庁教誨師を含む神道系は二百十七人(一二・二%)となってゐる。
今回の研修会を通じて本庁教誨師として有為の人材が養成され、神社神道に基づく宗教教誨のさらなる充実が図られることを切に望むものである。
○ 研修会では、まづ全国教誨師連盟事務長の谷澤正次氏が「行刑・矯正の概要」と題して講義し、行刑制度や矯正施設における処遇など、教誨師を務める上での基礎的な知識を教授。続いて全国教誨師連盟の理事長も務めた東京・鐵砲洲稲荷神社の中川文隆宮司が「教誨師の心構へ」と題し、本庁教誨師としてのあり方などについて自身の体験を交へつつ講義した。また「宗教教誨の実践」と題し、仏教系とキリスト教系の教誨師による模擬教誨や、現任の本庁教誨師による講義もあり、実例・実体験に基づくその内容は参加者たちにとって大いに参考になったことだらう。
先述の通り、本庁教誨師を含む神道系の教誨師は全体の一割強に過ぎず、教誨師が駐在しない神社庁もある。そもそも塀の中といふ極めて特殊な場において個人で活動する場面が多く、互ひの教誨活動をはじめ、それぞれが所属する矯正管区や矯正施設、教誨師会の状況などを窺ひ知る機会も少ない。
かうした研修会を、これからの教誨師としての活動に向けた情報交換の場としても大いに活かしてほしい。
○ 教誨師養成研修会は昭和六十二年、かねてからの要望に基づき伊勢の神宮道場を主会場に初めて開催された。その後、後継者養成が喫緊の課題となるなかで三年に一度開催されるやうになり、疫禍による延引を経つつ現在まで続けられてゐる。
この間、神社本庁では平成十九年に本庁教誨師の従事する教誨事業並びに事務の補助にあたる教誨師補助員の制度を導入。現任者が退任した際に後継者へと円滑な引き継ぎがなされることや、後継者となる人物が平素から教誨活動に関する知見を広めることを目的としてゐる。さらにこのほど、平成十一年に教誨師を志す神職の入門書として発行した『教誨ノススメ 教誨へ行こう!』を改訂。昨年六月の「刑法等の一部を改正する法律」施行による拘禁刑導入など、近年の法改正や制度変更を反映した内容で、今回の研修会で参考資料とされてをり、神社本庁の神職専用サイトにおいて閲覧・ダウンロードもできる。
研修会の開催、教誨師補助員の制度創設、教誨師入門書の改訂など、引き続き教誨師の後継者養成に向けた神社本庁の取組みに期待したい。
○ 近年、検挙者のうち約半数が再犯者であることなど、犯罪のくり返しをいかに防止するかが大きな課題となってゐる。
さうしたなか、宗教教誨を通じて被収容者の改善更生と社会復帰に寄与する教誨師の活動は、再犯防止により新たな被害者を生まないことに努めることを含め、国民が安心・安全に暮らせる地域社会の実現に貢献するといふ意味でも尊く重要なものだ。さうしたことをより広く斯界全体で共有したいものである。
先に触れた昭和六十二年の初の教誨師養成研修会にあたり、参加者からは「この研修で学んだ教誨の心得を日常の神明奉仕に重ね合せ、真剣に反省し、本研修の成果を高めたい」「次の世代を担ふ青年神職の研鑽こそ急務」などの感想に加へ、「教誨師になる立場の人は一層の教養と人徳を兼備せねばならない」「神道人としての日常の自己研鑚が何よりも大切」との思ひが聞かれたといふ。教養と人徳の兼備や自己研鑽は、教誨師を務める神職以外においても極めて大切であることを最後に付言しておきたい。
令和八年五月四日
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