杜に想ふ
子供時代 山谷えり子
令和8年10月05日付
5面
十月は神祭りの月。
昭和二十二年までは祭日に制定されてゐた宮中および伊勢の神宮での神嘗祭に向け、秋の実りの感謝と国家安泰を祈ってゐる。
さて、先月、自民党青少年健全育成調査会のメンバーとして、子供たちのSNS利用調査のため、十六歳未満のSNS利用を禁じる法律を世界で最初に作ったオーストラリアに行ってきた。規制導入の流れは広がり、EU(欧洲連合)のフォンデアライエン委員長も先月、十五歳未満の利用を制限する「子供法案」を発表し、EU全域でAI(人工知能)サービスにも制限をかけたいといふ。また、この八月にはアメリカのSNS依存訴訟で約二兆八千六百億円の和解金をメタが払ふ合意がなされ、今SNS運営企業側に安全対策強化を求める動きも広がり始めてゐる。
集中力や心を奪ふ依存は子供の脳の発達を損なひ、人格形成上も問題とされる。いぢめ、うつ、犯罪、性加害、自傷行為増などの深刻な指摘もある。日本でも、来年の通常国会での「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」改正を視野に自民党として議論を積み上げてゐる。こども家庭庁による今年二月の発表では、インターネット利用は日本の高校生で平日平均六時間四十四分、中学生で五時間二十四分。中毒、依存性は深刻な状況にある。
オーストラリアでは、教育省、通信省、州の担当大臣、国会議員、研究者、青少年問題に取り組む関係団体の方々にお会ひした。
担当する責任者たちからは、法律制定の意義はあったものの、実行状況となると三割ほどで、約七割の子供たちはさまざまな方法で迂回し、すり抜けて利用し続けてゐると聞いた。年齢や顔認証の機能は緩く、政府独立機関として年間六・六億円の予算で技術者、弁護士らが法の執行、調査、企業監視をしてゐても、裏付けを世界レベルで集める権限と連携を強化しなければ追ひつかないといふ。
十五歳の高校生たちとも話したが、「政府の考へ方は理解するが、娯楽やコミュニケーション手段として欠かせない」「規制の機能は緩いから簡単にすり抜けられる」などの率直な発言に、日本の法改正にあたってのヒントをもらった。先生方からはデジタル教科書から紙の教科書への回帰の重要性もお聞きした。
現在、SNSのもつ中毒性やAI技術の加速度的進化が、人類滅亡につながる懸念が専門家たちから急速に起こり始めてゐる。AIには人工的にウイルス設計をしたり、予期せぬ軍事行動や集団でのサイバー攻撃を起こしたりする懸念もあり、国連のグテーレス事務総長も国際的ルールづくりを訴へた。
過去の技術革新とはまったく異なる時代のなかに私たちは置かれてゐる。激しい国家と企業間の競争のなか、人間らしく成長できる子供時代、そして人類を何としても守らなければならない。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)
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