論説
重要性・可能性の再確認を 祭祀舞の指導者養成
令和8年09月14日付
2面
今号掲載の通り、神社庁祭祀舞指導者養成研修会が九月四日から六日までの三日間に亙り神社本庁を会場に開催された。
この研修会は神社庁研修所の講師たるべき人材の養成を目的とし、中堅神職研修の全課程を修了した三級以上の神職で神社庁長がとくに推薦する者、または総合研究所長が認めた者を対象とする。すでに今年四月には愛媛で初の出張開催といふ形で、また八月下旬には今回と同じく神社本庁を会場に開催されてをり、この全三回で延べ六十人が参加した。
神社庁研修所の講師を養成するといふ所期の目的に基づく成果が得られることを、また、そのためにも参加者のさらなる研鑽を切に望むものである。
○ この祭祀舞指導者養成研修会で実技及び指導法を学ぶ「朝日舞(宮司舞)」と「豊栄舞(乙女舞)」は、いまだ世情混沌とする占領下にあった昭和二十五年、祭祀の伝統継承と氏子崇敬者の宗教的意識・宗教的情操の涵養を願ひ、また荒廃した国民精神の振興と神社に対する崇敬の念の教化を目的に、新たな祭祀舞として制定された。当時、神社本庁教学部調査課(岡田米夫課長)主管のもと小野雅楽会が作曲・作舞にあたり、「朝日舞」は明治天皇御製を歌詞とし、「豊栄舞」は臼田甚五郎の作詞による。
ただ近年、祭祀舞の講師・講師補は減少傾向が見られ、その後継者養成が喫緊の課題とされてきた。そのため祭祀舞制定七十五周年を迎へた昨年、神社本庁では令和九年が次回の祭祀舞講師委嘱年にあたることを踏まへ、さらに次々回の委嘱年である同十二年が祭祀舞制定八十周年の節目にあたることを見据ゑ、講師体制の強化に向けた対応を検討。地区研修会開催に際しての助成金交付、中堅神職研修等における関連講義の実施などに加へ、今年、愛媛での出張開催を含めて指導者養成研修会を複数回開催してゐることもさうした対応の一環である。
祭祀舞講師・講師補が欠員となってゐる神社庁、その後継者が不在の神社庁においてはとくに、引き続き研修会への熱心な参加勧奨がおこなはれることを期待したい。
○ 祭祀舞に関しては、神前での奉納を目指し、神職のみならず氏子子女などを対象に講習会を開催するやうな事例が各地で見られる。
例へば昨年も、神社本庁の過疎地域等神社活性化推進施策の推進神社において、氏子子女への舞の指導と祭礼での奉納を企画したところたいへん好評だったといふ。舞姫からは、「足を引っ張らないか心配だったけど、無事にみんなと協力して舞へたので、すごくよかったです」といふ感想が聞かれ、また保護者からは、「恥づかしがり屋の娘が人前で堂々と舞ふ姿に胸が熱くなりました」「短い期間でいろいろなことを感じ、学ぶことができ、本当に貴重な経験ができてよかったと思ひました」と感謝の言葉が寄せられてゐる。さらに当該神社の宮司も「舞の奉納をくり返すことで、神社振興の心を育んでいけると考へてゐる」と述べるなど大きな手応へを感じたやうだ。
各地で少子高齢化・過疎化が進み、祭祀・祭礼を通じた神社・地域の活性化が期待される昨今。祭祀舞の指導・奉納に係る取組みは、祭祀舞の普及だけでなく、神社と氏子とを繋ぐ教化活動として大きな可能性を有するのではなからうか。神社庁研修所における神職への祭祀舞の指導に加へ、かうした教化活動において中心的な役割を担ふやうなことも含め、祭祀舞講師・講師補のさらなる活躍を願ふものである。
○ もちろん、祭祀舞指導者養成研修会における参加者それぞれの受講動機は、かねて神社本庁でも重視してきた神職としての生涯学習や自己研鑽の一環と考へてゐる場合などをはじめ、さまざまだらう。いづれにしても神社庁研修所の講師たるべき人材を養成するといふ研修会の目的の先には、祭祀舞の指導を通じた普及や祭祀の振興、ひいては斯道の興隆・発展に資するといふ重要な意義があるといへよう。
次回の祭祀舞講師委嘱年の令和九年、さらには同十二年の祭祀舞制定八十周年の節目に向け、祭祀舞の重要性と可能性について、講師・講師補を目指す神職はもとより広く斯界全体において再確認することが大切なのではなからうか。
令和八年九月十四日
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