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論説 持続的な食料供給の実現に 聖上お稲刈り

令和8年09月28日付 2面

 前号掲載の通り、天皇陛下には九月八日、皇居内にある生物学研究所脇の水田でお稲刈りに臨まれ、黄金色に稔った稲穂を刈り取られた。
 宮内庁によれば今年の作柄は平年並み。収穫された稲は例年、十月に伊勢の神宮で斎行される神嘗祭に根付きのまま奉献され、また十一月の宮中神嘉殿における新嘗祭にも奉られる。
 今年は各地で記録的な大雨に見舞はれてをり、稲作をはじめとする農業への影響も憂慮される。引き続き台風や豪雨などへの懸念が尽きないなか、さらなる被害が生じることのないやう心より祈念するものである。

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 この稲作をめぐり、農林水産省は今月初め、昨年市場に放出した政府備蓄米の買戻し手続きについて発表。百万トン程度を適正水準とする備蓄米が三十二万トンにまで減少してゐる現状を踏まへたもので、供給不足となる状況を避けつつ、計画的に恢復を図る観点から、まづは二十一万トンを対象とする。その後の報道によれば、全国農業協同組合連合会(JA全農)など八事業者との契約が決まったといふ。
 振り返れば、令和六年夏から「令和の米騒動」と呼ばれた米価の高騰が続き、それまで二千円前後で推移してゐたスーパーでの米(五キロ)の平均販売価格が同年秋には三千円を超え、翌七年春には四千円を上回った。同年六月以降は備蓄米放出の影響もあってか多少の値下がりが見られたものの、そののち再び値上がりに転じ、今年の年始にかけて最高値の四千四百十六円を記録。ただ、それ以降は下落傾向が続き、九月第二週の時点では二千九百七十一円となり、米騒動以前より千円ほど高く、高値のピーク時よりは千四百円ほど安い価格になってゐる。
 長引く物価高に悩まされてゐる消費者にとって、主食である米価の値下がりはありがたいことであらう。その一方で、資材費等の高騰に苦慮する生産者の悩みは尽きない。政府が目指す「需要に応じた生産」に基づき、米価の適正化・安定化の実現が望まれる。

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 このたびの内閣改造では、令和の米騒動がいはれ出してから臨時代理を含め六人目の大臣となる簗和生農林水産大臣が就任。その就任記者会見では米価の問題について、「生産者も消費者も納得できる価格といふものを実現していきたい」との考へを述べ、具体的な方途として昨年成立した「食料システム法」(食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律)の運用に期待を寄せた。
 同法は、農業における資材費や設備費・人件費、また食品の原材料費等が高止まりし、食料の持続的な供給が課題となってゐる近年の状況を踏まへ、食料安全保障の確保を図る観点から定められた。事業者に対し、生産者からコストの考慮や商慣習の見直しなどについて申し出や提案があった場合、誠実に協議等に応じることなど、価格適正化のための努力義務を課すとともに、農林水産大臣が認定した団体によるコスト指標の作成・公表などを盛り込み、合理的な費用を考慮した価格形成を推進。事業者への各種支援や特例措置等とあはせ、生産、製造・加工、流通、販売、消費といった繋がりによって成り立つ食料システム全体のなかで関係者の連携を促すことにより、持続的な食料供給の実現を目指してゐる。
 同法の全面施行から初めてとなる収穫の秋を迎へ、その内容を改めて確認しつつ、引き続き今後の動向を見守っていくことが重要だらう。

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 四月に公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が公表した米(五キロ)のコスト指標は、小売り段階で二千八百十六円。あくまで生産段階からのコストを積み上げた数値で利潤を含まないため、スーパーでの販売価格と単純に比較できないが、その受け止めには立場によってさまざまな意見もあらう。
 いづれにしても天皇陛下によるお稲刈りを拝し、まづは斎庭の稲穂の神勅に起源する稲作と、その収穫を神々に感謝する祭祀に勤しむことの重要性や尊さを再確認したい。さうしたことが、生産者が誇りを持って生業としての稲作を続けることに、また、消費者が納得できる価格のもとでの米の消費拡大に繋がり、ひいてはわが国における持続的な食料供給、食料安全保障の確保に結び付いていくことを期待したい。
令和八年九月二十八日

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