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【新刊紹介】看取られる神社――変わりゆく聖地のゆくえ 嶋田奈穂子著

令和7年07月28日付 6面

現場に寄り添ひ語られる くり返し提示される問ひ

 本書は「叢書 地球のナラティブ」シリーズ四作目として刊行された。以下の目次に示すやうに、著者がなぜ神社研究に取り組むやうになったのかを述べた「はじめに」に始まり、具体的な事例を扱ふ本篇の四章、そして人が聖地をつくり出し、それを大事に守ってきた意義や新たな提案に言及する「おわりに」、さらには「あとがき」「英文要旨」に至るまで、実地調査に裏打ちされた豊かな語りが展開される。地域研究を専門とする著者が、これまで国内外で千カ所以上の「聖地」を歩き、その経験に基づいて書き上げた良書である。

 本書の根柢には「神社とは何か」「なぜそこに神社があるのか」といふ著者の問ひがくり返し提示される。これは、宗教学・神道学などの領域における「人はなぜ神社を信仰するのか」といふ学術的命題と深く通じるものでもある。だが本書は、学術的な問ひを掲げつつも、それを読者に「難解」だと感じさせることはない。エッセイ風の語り口によって、研究者だけでなく一般読者にも開かれた読み物として仕上がってをり、ドキュメンタリーとしての魅力も備へてゐる。
〈税込1650円、あいり出版刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(麗澤大学准教授・冬月律)
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