論説
広報研修会 SNSによる動画広報の可能性
令和7年07月14日付
2面
前号掲載の通り、「SNSにおける動画広報~SNS広報の注意点と自分で出来る魅力的な動画制作~」を主題とする神社本庁広報研修会が六月十二・十三の二日間に亙り神社本庁を主な会場として開催された。
近年、さまざまな広報活動において重要な手段の一つとして活用されてゐる「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」に着目した今回の研修会。スマートフォン一つで、より目を惹く魅力的な動画の撮影方法や、自ら簡単にできる動画編輯の方法などを学ぶことを趣旨とした。二日間の日程中、講義だけでなく屋外での撮影実習や撮影した動画の編輯作業、少人数に分かれての討議もおこなはれ、これまでにない劃期的な内容は参加者からも好評だったやうだ。
参加者たちが研修の成果を持ち帰り、それぞれの地元で具体的な活動展開へと繋げていくことを期待したい。
○ 研修会では動画の撮影・編輯に関する講義に先立ち、本庁職員がSNSの分類や利用者数の推移などを紹介。また、ウェブサイト上の特定の対象に批判が殺到して収まりがつかなさうな状態を表す、いはゆる「炎上」について、とくに炎上しやすい投稿の具体例を示しつつ説明した。
このうちSNSの利用に関しては、総務省が六月二十七日に公表した「令和六年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」においても詳細な分析がなされてゐる。その調査報告書によれば、利用者同士の交流を主な目的とするソーシャルメディア系サービス・アプリ等の利用率は、「ライン」が九〇%を超え、以下「インスタグラム」の五二・六%、「X」(旧ツイッター)の四三・三%、「フェイスブック」の二六・八%が続く。このほか動画共有系として「ユーチューブ」の八〇・八%、「ティックトック」の三三・二%などを含め、年代によって多少の偏りはあるものの、かうしたSNSが広く利用されてゐる状況がわかる。
さまざまなSNSが急速かつ広範に普及するなか、それぞれの特徴や長所と短所、利用に際しての注意点など、まづは確かな知識を得ることが求められるだらう。
○ かうしたSNSの活用については、例へば昨年の東京都知事選や兵庫県知事選などでも大きな注目を集めた。このたびの第二十七回参議院議員通常選挙に際しても、与野党七党で組織する「選挙運動に関する各党協議会」が「SNS上を飛び交う多くの情報について、その発信源や真偽を確認すること」などを呼びかけるメッセージを発表してゐるやうに、SNSの影響力が増すなかでとくに誤った情報の拡散が課題となってゐる。
また先日、女子児童を盗撮してゐたなどとして愛知県名古屋市の小学校教員らが逮捕される事件が発生。その画像が、複数の教員が参加するSNS上のグループで共有されてゐたとも報じられてをり、SNSの負の側面を再認識させる事件といへよう。そのほかSNSを通じた誹謗中傷、著作権・肖像権の侵害、各種の詐欺事件をはじめ、消費行動に大きな影響を与へる「インフルエンサー」の安易な活用や、広告であることを隠匿した「ステルスマーケティング」との兼ね合ひなどを含めて懸念される事柄は多い。
もちろんさうした問題において、必ずしもSNSそのものにすべての原因があるわけではないだらう。ただ利用に際しては、関係法令や倫理・道徳など社会規範の遵守といったコンプライアンスをはじめ、さまざまな課題の存在について常に留意しておきたい。
○ SNSの活用をめぐり多様な課題があるとはいへ、今回の研修会における参加者の感想などを聞いてゐても、今後、神社において広報活動をおこなふ上で大きな可能性を感じさせるものであることは間違ひなささうだ。
第六十三回神宮式年遷宮の本格的な広報活動を控へ、また予算・人員が十分ではない過疎地域等における神社の活性化が懸案とされるなかで、スマートフォン一つで可能なSNSによる動画広報を学んだ今回の研修会。SNSの活用も選択肢の一つとして、これからの神社における広報活動のあり方を考へていくためにも、まづは今回のやうな研修会の開催が各地区で検討されることを望むものである。
令和七年七月十四日
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