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論説 神青協夏期セミナー 「先人のこころ」継承に向けて

令和7年09月15日付 2面

 前号掲載の通り、「いまを生きる~私たちが受け継ぐ先人のこころ~」を主題とする神道青年全国協議会(神青協)の夏期セミナーが八月二十一・二十二の二日間に亙り東京・靖國神社の靖國会館を会場に開催され、全国各地から青年神職約百四十人が参加した。
 今回の夏期セミナーは、今年が日清戦争戦勝百三十年、日露戦争戦勝百二十年、大東亜戦争終結八十年の節目にあたることを踏まへて実施。英霊祭祀とは何か、戦後とは何か、これからのために為すべきことは何かを考へ、未来への指標を得ることなどを趣旨とした。二日間の期間中は、靖國神社での正式参拝ののち同神社職員とジャーナリスト二氏による講義を聴講し、講義の合間には遊就館における特別展「終戦八十年戦跡写真展 今も残る英霊の足蹟」の見学もおこなった。
 これからの斯界を担っていく青年神職たち。夏期セミナーの成果を踏まへた今後のさらなる活躍に期待するものである。


 振り返れば神青協では、十年前の終戦七十年、二十年前の終戦六十年、三十年前の終戦五十年に際しても、英霊の慰霊・顕彰をはじめ、道義国家再生に向けた道徳教育の重要性、正しい歴史の継承、誇り高い志の恢復、戦後の総括などを主題に掲げて夏期セミナーを開催。平成七年の終戦五十年当時の会長の子息が、奇しくも今回の終戦八十年に際して同じく会長を務めてをり、例へばさうしたことにも、神青協が長期に亙って、それこそ世代を超えて着実に取組みを重ねてきたことが象徴的に表れてゐるといへよう。
 戦後八十年が経過した今、英霊を直接に知る遺族や戦友の高齢化・減少が進み、慰霊・顕彰の継承が課題となってゐる。さうしたなかで親から子、子から孫へと活動を繋げていく神青協の取組みは、いよいよ重要性を増してゐる。十年前、二十年前、そして三十年前の夏期セミナーの参加者たちは当時と現在とで少なからず立場が異なるだらう。今それぞれの立場において何ができるのか、同輩はもとより先輩・後輩たちとの連携のなかで考へていくやうなことも大切なのではなからうか。


 をりしも九月二日には、東京湾上の米国軍艦ミズーリ号において降伏文書の調印式がおこなはれてから八十年の節目を迎へた。
 今から八十年前、八月十五日正午に「大東亜戦争終結に関する詔書」(終戦の詔書)の玉音放送があり、その半月後の降伏文書調印式ののち、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が本格的にわが国の占領政策に着手。軍国主義の排除と民主化の促進を掲げた占領政策のなかで、宗教政策もその重要な一つとされ、九月二十二日の「降伏後ニ於ケル米国初期ノ対日方針」、十月四日の「政治的、社会的及宗教的自由ニ対スル制限除去ノ件」(人権指令)などに続き、十二月十五日には「国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件」(神道指令)が発せられた。
 さうした大東亜戦争終結を起点とする占領政策のなかで、昭和二十一年二月三日に神社本庁が設立され、さらに終戦直後の混乱期において正しい情報を共有すべく本紙・神社新報が創刊されたのである。大東亜戦争終結、GHQによる占領政策、そして本庁設立と新報創刊は一連の歴史の流れのなかにあり、その延長線上に現在の斯界が存在することを改めて確認したい。


 大東亜戦争終結八十年の節目にあたり、「いまを生きる~私たちが受け継ぐ先人のこころ~」を主題に掲げ、英霊祭祀とは何か、戦後とは何か、これからのために為すべきことは何かを考へ、未来への指標を得ることなどを趣旨として開催された今回の夏期セミナー。かうした機会を通じて英霊祭祀の継承について考へるとともに、さらに来年の本庁設立と新報創刊の八十周年を見据ゑつつ、大東亜戦争終結を起点とする占領政策をはじめ、現在に至る戦後の斯界の歩み、さうした歩みのなかにおける「先人のこころ」について顧みることも重要だらう。
 二十年後の大東亜戦争終結百年をいかに迎へるのか。斯界の将来を担ふ青年神職には、中長期的な視点で将来をイメージしやすい若さをはじめ、その行動力と情熱を活かし、今後とも研鑽を積み重ねてほしいものである。
令和七年九月十五日

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