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杜に想ふ 幸福の形 山谷えり子

令和7年08月04日付 6面

 夏の陽射しのなか、輝くひまはりの花に励まされてゐる。悲しみや苦しみがあっても、お天道さまの方に顔をあげて歩いていくんだといふ気持ちがもりもり湧いてくる。家族で夏休みを楽しむ姿を目にするのも嬉しく、「幸くませ 真幸くませと 人びとの 声渡りゆく 御幸の町に」平成十六年に上皇后陛下(当時・皇后陛下)の詠まれた御歌が胸をよぎる。
 この夏の時間、『逝きし世の面影』(渡辺京二著・平凡社ライブラリー)を何度目かになるが読み返してゐる。幕末、明治初期の外国人による日本観察記を集めたもので、日本の風土や国がらが示され、日本の源流に思ひを馳せて実に新鮮なのである。たとへば「子どもの楽園」といふ章のなかでは、英国女性イザベラ・バードの明治十一年の見聞として「私はこれほど自分の子どもに喜びをおぼえる人々を見たことがない。……男たちが低い塀に腰を下して、それぞれ自分の腕に二歳にもならぬ子どもを抱いて、かわいがったり、一緒に遊んだり、自分の子どもの体格と知恵を見せびらかしているのを見ていると大変面白い」と記し、モースは「私は日本が子供の天国であることをくりかえさざるを得ない。……ニコニコしている所から判断すると、子供達は朝から晩まで幸福であるらしい」と述べてゐる。
 また、「女の位相」といふ章では、英人写真家ポンティングが家庭のなかの女性について「彼女は独裁者だが、大変利口な独裁者である。彼女は自分が実際に支配しているように見えないところまで支配しているが、それを極めて巧妙に行っているので、夫は自分が手綱を握っていると思っている」と語ってゐる。そのほか「陽気な人びと」「簡素とゆたかさ」の章などで、日本の民族性を興味深く示してゐる。
 世界価値観調査といふ百二十カ国と地域の研究機関が参加する五年ごとの国際的時系列調査がある。この調査では日本の女性の幸福度は男性を上回り世界トップレベル。“幸福度女性優位ランキング”では、二〇一九年の調査でフィンランドに次ぐ世界二位。前回は世界一だった。ところがマスコミや政治の場でよく語られるのが世界経済フォーラムといふシンクタンク発表の“ジェンダーギャップ指数”で百四十八カ国中日本は百十八位として男女平等のとりくみが遅れてゐるとくり返される。いっぽう国連の開発計画(UNDP)発表の“ジェンダー不平等指数”では百七十二カ国中日本は二十二位で、日本は良いほうに分類されてゐるのである。つまり、指標をどう立てるか、どう質問するか、どのやうな歴史と文化があるかで当然違った結果になるわけである。
 夏の太陽に咲くひまはりのやうに、日本はいたづらに自虐的にならず、のびのびと本来の生きる姿、老若男女和合の形を世界に示していくのがよいのではないかと思ふのだが、いかがだらうか。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

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